【南河内探訪】水越峠(千早赤阪村・御所市) ・大阪府側から峠まで

水越峠

水越峠(みずこしとうげ)は大阪府南河内郡千早赤阪村大字水分と奈良県御所市大字関屋の境にある峠です。大阪府の南河内地域と奈良県の葛城・吉野方面を結ぶ幹線道路としてかつては交通量も多かったものの、水越トンネルの開通以降は激減しています。しかし、北に大和葛城山、南に金剛山があり、これらの山への登山口にもなっていることから休日には富田林から峠付近までバスが出るなど登山やハイキングで訪れる人も多いようです。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
水越峠(千早赤阪村・御所市)

水越峠は、その名から察せられるように昔から水に関するエピソードが多い峠でした。江戸時代以前から河内国(大阪府)側と大和国(奈良県)側では峠の水ををどちらに流すかという水利を巡る争いが何度もあったそうです。

もともと大和国葛上郡の関屋村、増村、名柄村、豊田村、宮戸村、森脇村などからなる吐田郷(はんだごう。現御所市の一部)では水利が悪く灌漑に苦しんでいましたが、室町時代後期から江戸時代初期頃の人物とされる名柄村の上田角之進が河内側に流れていた金剛山の水を大和側へ流れるように上流で工事を行なったとされています。これにより、大和側の水不足は解消されましたが、水量の減った河内側の農民は再び流路を変えるため幾度となく実力行使に出るなど係争状態となりましたが、1701年(元禄14年)に京都所司代から「水は大和のものなり」との判決が出ました。

御所市名柄にある日蓮宗の本久寺では、上田角之進に対する報恩と五穀豊穣を祈願する行事が行われているそうです。


大阪側の千早赤阪村には楠木正成関連でも有名な建水分神社(たけみくまりじんじゃ)がありますが、奈良県側の御所市関屋にも葛木水分神社(かつらぎみくまりじんじゃ。御祭神:天水分神、国水分神)が鎮座しており、いずれも由緒ある式内社となっています。さらに、峠付近から大阪府側、奈良県側に流れる川はどちらも水越川と呼ばれています。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
水越トンネル(大阪側)

水越峠を通る道路は、1970年(昭和45年)に三重県熊野市から大阪府大阪市平野区に至る国道309号(一般国道)に指定されました。1980年代初頭まで峠付近は非舗装道路でしたが後に舗装されました。しかし1997年(平成9年)に水越トンネルが開通すると当然峠の交通量は激減しました。

しかし、水越峠には金剛・葛城両山への登山道の入口があり、ダイヤモンドトレールの通過点でもあることから登山やハイキングで訪れる人も多く、大阪府側には千早赤阪村村営の無料駐車場(約30台分)もあります。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
通行止の案内(御所市大字豊田)

水越峠から奈良県側の祈りの滝までは2017年(平成29年)10月の台風21号の影響により、現在も通行止めとなっています。なお、祈りの滝へは奈良県側から行くことが可能です。

大阪府側から水越峠へ

大阪府南河内郡千早赤阪村大字水分辺りから国道309号は水越川に沿って上って行くことになります。途中からは河南町大字上河内となりますが、青崩(あおげ)地区の最東端から再び千早赤阪村に入った所に水越トンネルに続く新道(現道)と、水越峠に至る旧道への分岐があります。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
国道309号旧道との分岐

広い現道から細い右の旧道に入ると「水越峠」バス停までの1kmほどは大きなカーブの無い上り道となっています。道路の左側には水越川が流れていて、川に沿って憩いの広場や遊歩道もあるので、お手軽に行楽気分を味わえるスポットとなっています。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
水越峠バス停までの旧道

季節にもよりますが、特に休日はこの辺りの道路際に登山者などの車がよく駐車されています。土日祝日になると金剛バスが「水越峠」バス停まで運行しているのでその妨げにならないように注意が必要です。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
水越峠バス停

道路が左にカーブする手前に「水越峠」バス停があります。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
水越橋

現在、バス停から先は車両通行止めとなっています。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
千早赤阪村名所案内

水越橋手前に千早赤阪村の名所案内地図が設置されています。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
金剛山への道

バス停から約350m上ると、右手にフェンスとゲートがあります。ゲートには奈良県御所市の「吐田郷(はんだごう)生産森林組合」の注意看板がありますが、ゲートの左側は人が通れるように開けてあり、こちらが金剛山方面へと続くダイヤモンドトレールとなっています。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
奈良県の標識

さらに30mほど上ると、大阪府と奈良県の境界となります。奈良県の標識は県章の入った比較的新しいもののようです。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
大阪府の標識

ここで振り返ると大阪府の標識も確認できますが、こちらはやや古い印象。この府県境を少し奈良県側に入った左(北)側が葛城山へと続くダイヤモンドトレールとなっています。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
奈良県側は通行止め

国道309号旧道は、奈良県に入るとすぐに通行止めとなっています。奈良県高田土木事務所が設置した「通行止のお知らせ」には、前述のように2017年の台風21号による災害により道路が崩落し、車両はもとより歩行者も全面的に通行禁止となっていることが記されています。約1.6km奈良県側に下ると飲用可能な水を汲める祈りの滝がありますが、こちらへ行くには奈良県側から旧道を上る必要があります。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
近畿自然歩道案内板

府県境付近には、「近畿自然歩道」の案内版もあります。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
葛城山への道

ダイヤモンドトレールは、金剛葛城山系の稜線を縦走する長距離自然歩道で、「ダイトレ」とも呼ばれています。その起点は奈良県香芝市の屯鶴峯で、二上山、大和葛城山、金剛山、岩湧山などを経て大阪府和泉市の槇尾山を結ぶコースで、その全長は約45kmに及びます。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
水源涵養保安林の看板

今回は、少しだけ葛城山方面に登ってみましたが、真夏の猛暑日で長期間雨の降らない時期でしたが空気は心地よい涼しさで、水路には冷たい水が勢いよく流れていました。

水越峠(千早赤阪村・御所市)
水路の流水


アクセス

千早赤阪村の国道309号水越トンネル東側出入口から西に約200mの分岐から旧道に入り約1.6km上ります。現在、自動車は約1。2km先の「水越峠」バス停手前まで通行可。

近鉄長野線「富田林」駅から金剛バスで「水越峠」バス停下車。バス停からは約400mで峠に着きます。なお、「水越峠」とその手前の「葛城登山口」バス停へのバスは、土日祝日のみで1日4便の運行となっています。

●金剛自動車 公式ホームページ →http://www.kongoujidousha.com/index.html

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