阿麻美許曾神社の参道
南河内の最北端といえば現在は松原市といえますが、その松原市では近年「開運松原六社参り」といって、元旦から15日までに松原市内の五社と近隣の一社(阿保神社・我堂八幡宮・柴籬神社 ・布忍神社・屯倉神社・阿麻美許曾神社)を参詣し開運を願う行事が注目されていますが、この時に巡る六社の一つに松原市以外の神社として唯一数えられているのが、大阪市東住吉区の阿麻美許曾神社(あまみこそじんじゃ)です。
阿麻美許曾神社の参道(松原市・大阪市東住吉区) |
地図で阿麻美許曾神社を見ると、大和川の南側(左岸)にありながら神社とその周辺は東住吉区矢田7丁目となっています。しかも地図を拡大すると、その東住吉区が細長く南の方に続いているのがわかります。これが、地図マニアの中で有名な?阿麻美許曾神社の参道です。
写真は基本的に2020年(令和2年)3月撮影。
●阿麻美許曾神社について詳しくは →阿麻美許曾神社(大阪市東住吉区) ・300年前の大工事で引き離された氏神
松原市に食い込む大阪市
前述のように、阿麻美許曾神社は大和川左岸(南岸)の松原市の天美地区に囲まれた場所に鎮座していますが、住所は大阪市東住吉区矢田7丁目となっています。当社は江戸時代までは河内国丹北郡枯木村(後の中河内郡矢田村)に属する神社で、氏子地域は今の矢田地区、天美地区(城連寺・油上・芝・池内)まで広がっていたことから「七郷の宮」とも呼ばれていたそうです。そして「天美」という地名も阿麻美許曽に由来するといわれています。
しかし、1704年(宝永元年)に大和川の川違え(付け替え)工事が行われた結果、村の中を東西に横断する形で新たな大和川が流れることになり、阿麻美許曾神社の氏子地域は南北に分断されてしまいます。この結果、新しい大和川の南側に残された氏子地域の大半は後に松原市に編入されることになりましたが、当神社は矢田村の氏神であった為に、南に長く延びる神社の参道も含めて矢田村に残留しました。そして矢田村が大阪市東住吉区に編入された後もそのまま大阪市東住吉区矢田7丁目として現在に至ります。
また、この参道はかつての西除川の堤防跡でもあるようです。西除川は行基ゆかりの狭山池から北へ流れていましたが、江戸時代の大和川付け替えの際に、現在の河内天美駅の西付近で流路を西向きに変えられたそうです。しかし、参道である堤防の大部分は当時の主要街道である下高野街道と重なっていたことからそのまま残されたようです。
矢田7丁目として、松原市に食い込む形で細長く残った参道ですが、今は参道としては認識されていないようです。現在はとりあえず車が対面通行出来る程度の幅の道路ですが、周辺に大きな道路が次々と開通している現在でも、それなりの交通量があります。
同じような大和川南岸の大阪市市域として、松原市の大堀八幡神社西側一帯が平野区長吉川辺4丁目という例もあります。また、藤井寺市の黒田神社も大和川の付け替えで氏子地域が分断されています。
また、福島県喜多方市の飯豊山神社(いいでさんじんじゃ)の参道は、新潟県と山形県の県境を縫うように約7.5kmもあるなど、全国には参道が現在の自治体の境界線に影響している場所が結構あるようです。
参道跡を辿る
阿麻美許曾神社の参道だった細長い大阪市東住吉区矢田7丁目のエリアは約600mあり、かつては下高野街道として賑わい、現在は府道26号大阪狭山線(旧道?)になっています。この府道は大阪市生野区林寺から大阪狭山市池之原へ続く道路です。阿麻美許曾神社北東に架かる下高野橋から約300m南で神社の神門から60mほど南に延びる道と合流しますが、この神門から南に延びる道とその延長線が矢田7丁目で、その両側が松原市となっています。
今回は、旧参道を辿るということで、神社側からではなく参道入口側から歩いてみたいと思います。
左が府道26号、右が187号(南向き) |
旧参道の大部分は下高野街道と重なっていて、これは現在府道26号となっています。旧参道の南の端、つまり矢田7丁目の南端からさらに130mほど南の府道26号と府道187号の分岐からスタートします。
府道26号(北向き) |
この府道26号(下高野街道)と府道187号の分岐付近は旧池内村(後の天見村池内)の西に当たります。
府道26号(南向き・2018年8月) |
参道の始まる場所(北向き) |
府道の分岐点から100mほど北に進むと信号のある交差点がありますが、この交差点の10mほど北から矢田7丁目となります。つまり、ここからが参道の始まりで、かつては鳥居もあったそうです。
参道入口から約70m(北向き) |
旧参道入口から70mほど北に行くと、右手にガソリンスタンドがあります。
電柱には「天美東」(2018年8月) |
このガソリンスタンドはエネオス松原天美SS松原油業株式会社で、道路の東側にあって住所は松原市天美東9丁目となっています。
エネオス松原天美SS |
ちなみに、ガソリンスタンドの向かい、道路の西側は松原市天美西となっています。
参道入口から約150m(南向き) |
参道入口から約150m西側の電柱 |
旧参道西側の電柱には青い住所の標識に「天美西二丁目」とありますが、他にも「芝西」や「ユガミ」などかつての村の名も見えます。
参道入口から約180m(北向き・2018年8月) |
参道入口から約210m(北向き・2019年6月) |
参道入口から200mほど進むと、左(西側)にセブン-イレブン松原天美西2丁目店があります。この辺りの西側が、かつての芝村や油上村の中心だったようです。
関西出雲久多美神社鳥居 |
参道入口から270mほど進むと右手(東側)に関西出雲久多美神社の大きな鳥居があります。こちらの神社の住所は天美北7丁目となっています。
松原交通株式会社天美営業所 |
関西出雲久多美神社鳥居の北隣には松原交通株式会社天美営業所がありますが、こちらは名称とは異なり住所が大阪市東住吉区矢田7丁目となっています。この辺りは矢田7丁目の範囲が旧参道の外側にも少し広がっています。
天美北七交差点(北向き) |
参道入口から約450m進むと、広くて真新しい道路と交わる天美北七交差点があります。この東西に走る広い道路も府道26号で、その地下には阪神高速6号大和川線が走っています。
左が神社で右が下高野街道(北向き・2018年8月) |
天美北七交差点から北に約120m、旧参道入口から約550mの辺りで阿麻美許曾神社の参道と下高野街道(府道26号)が分かれます。
阿麻美許曾神社神門(北向き・2018年8月) |
参道と府道の分岐を左の参道に入ると60mほど先に阿麻美許曾神社鳥居と神門があります。
アクセス
近鉄南大阪線「河内天美」駅の西側出入口から線路を右に見ながらに北(阿部野橋・大和川方面)に250mほど歩き、突き当り(次の踏切)を左折。そこから350m進むと信号のある交差点があり、右折すると松原市に囲まれた大阪市東住吉区の道路(旧参道)です。北に600m少々進むと阿麻美許曾神社です。
また、府道26号の「三宅北ランプ」と「天美西三」の間にある「天美北七」交差点の南北が松原市に囲まれた大阪市東住吉区の道路(旧参道)で、交差点から約200m北に阿麻美許曾神社があります。
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